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2005年 04月 29日 ( 2 )

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【尼崎脱線事故など交通トラブルの背景について考える】

●尼崎で起きたJR西日本の断線事故については、事故原因の検証と早急な事故再発防止対策が求められていると思いますが、単に事故を起こした運転手やJR西日本の個別責任の追及だけにとどまらず、このような事故が様々な分野で多発する背景として、安全を犠牲にしたコスト削減や効率化、必要以上のスピード化社会などが影響しているのではないか、という報道も見受けられます。

○北海道新聞の現役記者である高田昌幸さんのブログ「札幌から ニュースの現場で考えること」に書かれていた記事「JR福知山線の事故と、リストラ社会」は、今回の事故と少し前まで連日報道されていた日本航空トラブルを関連づけ、日本のリストラ社会に焦点を当てて事故が発生する「背景」を考察しています。
 私も、漠然ですがこの意見に同感でして「上手く根拠を示せないのですが、事故=余裕=コスト=定時性=スピード=効率化=リストラ=成績主義=虚偽報告・・・・・これらのキーワードがどこかでつながるような」とコメントしました。

 これに関して、4月19日付けの朝日新聞(夕刊)に掲載されていた中野不二男氏(ノンフィクション作家)の記事「かがく批評室:日航トラブルをめぐって」が、まさに「わが意を得たり」という内容でしたので、以下に記事の一部を紹介したいと思います。

 水は100℃、ヘリウムはマイナス269℃で沸騰し、カエルは気温10℃以下になると冬眠に入る。物事には、それまでとはちがう反応が起きるギリギリの値がある。そういう値のことを、化学や技術の世界では「しきい値」と呼ぶ。学生時代に実験室に入っていた人は、いろんな場面で耳にしてきた言葉だろう。
 このところ、日本航空のトラブルが多発している。部品の経年劣化が原因なのか、作業体制に問題があるのか詳しいことはわからない。しかしトラブルのニュースを見るたび、経営合理化の記事を読むたび、つい「しきい値」を思い浮かべる。仕事にも、作業内容や労働時間などの条件が一定の値をこえると、集中力の低下を招く「しきい値」があるはずだ。

○この記事は、今回起きた脱線事故の1週間前に掲載されていたものですが、これを書いた中野氏は、おそらく今回の事故についても「起こるべくして起きた」と思っているのではないでしょうか。
 以前にもこのブログで少し紹介しましたが、リストラ、合理化のかけ声のもと、本来効率化してはならない部分にまで「効率化」が進み、私は、これまで安全を支えてきた現場の「人間」がついに悲鳴を上げ始めたような気がしてなりません。

 朝日新聞記事の中で中野氏は、『航空機の機体であれ、ウラン溶液であれ、安全確保のためには絶対こえてはならない「しきい値」がある。科学や技術の産物を利用するうえで、それは譲ってはならない値のはずだ。そのために保守・運用する人間がいる。そして、その人間の集中力にも「しきい値」がある』とも述べています。

 今回の脱線事故に関しては、余りにもシビア(1秒単位?)な定時性を確保するために現場の「人間」に対して注意・指導を強化する一方、安全性を担保するための「システム」づくりをおざなりにしてきたJR西日本の企業体質を疑問視する報道もあります。
 私はJR西日本の内部事情を知らないので、指導教育方針がどのような状況だったのか、安全を担保する「システム」が本当に不十分だったのか判断できません。
 しかし、『競争の激しい時代に入り、企業は効率だけが優先される体質になってしまった』という中野氏の指摘は、阪神電鉄や阪急電鉄としのぎを削っていたJR西日本に対しても当てはまるような気がします。

○さらに中野氏は、『日本の組織の特徴は、上に行けば行くほど科学や技術を理解できる人材が少なく、そうした具体的な認識が薄いことだ』と指摘しますが、JR西日本や日本航空だけでなく、これまで事故や不祥事を起こしてきた多くの企業に対しても当てはまるような気がします。
 最近の事例では、東武伊勢崎線の踏切事故が思い起こされますが、あの事故でも「機械」では出来ない秒単位の遮断機の上げ下げを、「人間」の努力だけに頼っていたことが明らかになっています。
 こうした企業の経営陣が、現場を支える「人間」の「しきい値」を一体どこまで把握していたのか、私は疑問に思います。さらには、北側国交相までもが「利用者は命を預けているわけで、事故を契機に運転士資格、教育の在り方を点検しないといけない」と「人間」の方を「カイゼン」しなければならない、とも受け取れるような発言をしていますが、日本という組織の指導者は、現場を支える「人間」の「しきい値」をどのように受け止めているのでしょうか。

 中野氏は『小さな組織である中小企業の技術の信頼性が、世界的にも高い評価を得ているのは、経営のトップに現場上がりが多いからだ。彼らは、たとえ効率を追求しても、こえてはならない「しきい値」をはっきりと認識している』と指摘しています。
 私は、すでに悲鳴を上げ始めた現場の「人間」の声に、企業の経営陣や政府、さらには私たち国民自身も気づかなければ、いつかまた、今回と同じ悲劇が繰り返されるような気がしてなりません。

by azarashi_salad | 2005-04-29 13:37 | 私説 <:/p>

☆当たり前のようで大変なこと

●今からもう10年近く前の夏休み、家族で故郷(四国)に遊びに行き、名古屋まで帰るときのはなしである。

○その日は朝から全国的に天気が悪く、空港を出発する前からターミナルでは「名古屋地方の天候が悪く引き返す場合もあります」とアナウンスしていた。
 そのような中、私たち家族を乗せて空港を飛び立った飛行機は、名古屋空港に向けて順調に飛行を続け、いよいよ着陸態勢に入ろうとしていた。

 名古屋空港の上空は、予想していたとおり厚い暗雲が立ちこめており、私たちを乗せた飛行機は、着陸するためにその雲の中に飛び込んだ。
 その瞬間、窓から見える外の景色はそれまでとはうってかわって真っ暗となり、ところどころに稲光がくっきりと見えた。
 「こんな状態でも着陸できるなんて最近の航空技術はすごいなあ」と感心したその時である。私たちを乗せた飛行機は、まるでジェットコースターのように大きく高度を下げたかと思うと急上昇し、あっという間に暗雲の中を抜け出した。

 時間にしてわずか数秒のことだったと思うが、余りのショックのため機内には泣き出す子供もいるほどだった。その直後、パイロットの方から「名古屋空港上空の天候が回復するのを待ってもう一度着陸を試みますが、それでもダメなら大阪空港に向かいます」とアナウンスがあった。
 私は、思わず「もう一度試みなくていいから大阪空港に向かってくれ」と心の中で叫んだのだが、10分ほど上空を旋回した後だろうか、私たちを乗せた飛行機は、今度は暗雲のある北側ではなく比較的天候がよい南側から着陸態勢に入り、滑走路を巻くようにして無事に空港に着陸した。

 その瞬間、機内では誰からともなく拍手がわき起こったのだが、その拍手が、私たちを無事に目的地まで運んでくれたパイロットに対して贈られたものであることは間違いない。
 名古屋空港への到着時間は、当初の予定より30分以上遅れたのだが、誰一人文句を言う乗客はいなかった。

by azarashi_salad | 2005-04-29 13:37 | 無駄話 <:/p>