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▼「事故」はこうして作られる

▼「事故」はこうして作られる_a0008617_1443047.gif●<プール事故>ふた外れた状態をなぜ放置…怒りの声が噴出(毎日新聞) - 8月1日
 夏休みのプールで悲惨な事故が起きた。埼玉県ふじみ野市の市営プールで31日、同県所沢市立小手指小2年、戸丸瑛梨香ちゃん(7)が大勢の人の前で排水口にのみ込まれ、死亡した。「普段から排水口の吸引力はすごかった」と利用客は口をそろえる。なぜ、排水口はふたが外れた状態で放置されていたのか。現場では怒りの声が噴出した。

○長い梅雨がようやく明け、これからが夏休み本番というのに悲惨な事故が起きてしまった。ご冥福をお祈りしたい。
 埼玉県警は、安全管理や運営に問題があったとみて業務上過失致死の疑いで捜査を始めたらしいが、プールを運営していた市と管理を委託されていた施設管理会社の責任は免れまい。

 記事を読む限りでは、今回の事故を防ぐチャンスは何度もあったと思われるが、運営者及び管理者側とも、その都度、放置していたと言われても仕方がない。

◆一度目のチャンスは、ふたのトラブルに最初に気付いたとき。

 産経新聞の記事には、『さく状のステンレス製ふた(約60センチ四方)2枚で半分ずつふさいでいた。通常ふたはボルトで固定されているが、外れた1枚は針金で補修されたような形跡があった』と書かれているが、これが事実ならば排水口のふたを完全に修理(あるいは交換)しないままに流水プールの運営を続けていた運営者側の大きな判断ミスといえる。

 ふたの修理(交換)が終わるまでプールの運営を停止すると言う判断がどうして出来なかったのだろうか。現場がそのような判断を下したのだろうか、それとも現場からの報告を押し切る形で、仮補修のまま通常通りの運営を続けていたのであれば、その判断を下した責任者の責めは免れないだろう。

◆二度目のチャンスは、当日の施設点検のとき。

 毎日新聞の記事では、『このプールは利用者に1時間ごとに休憩を取らせ、監視員が設備を点検していた。何を確認していたのか』との利用者の声を紹介しているが、確かに、どうして設備点検の際にふたが外れている(あるいは外れかかっている)ことを発見できなかったのだろうか。(プールによっては休憩時間に監視員が潜って設備点検をしているところもあるが、果たしてこのプールではそうした点検は正しく行われていたのだろうか?)

 さらに、上記の通りふたが仮補修の状態であればなおさら、定期点検時には入念なチェックが求められるわけだが、アルバイトの監視員(どうやら高校生らしい)にそうした情報がどこまで的確に伝えられていたか疑わしい。

◆三度目のチャンスは、ふたが外れていることに監視員と現場責任者が気付いたとき。

 毎日新聞の記事によると、『プールの現場責任者が排水口のふたが外れていると監視員から報告を受けたのは午後1時半ごろ。責任者は緊急補修するため監視員に道具を取らせに行き、その間、別の監視員が「(排水口の)さくがないから、そばに寄らないで」と利用客に呼びかけたという。しかし、プールから出るような指示はなかった』とのこと。

 一方、産経新聞の記事には、『吸水口近くにいたのはアルバイト監視員2人。事故直前に遊泳客から「水底にふたが落ちている」と通報を受け、吸水口に近づかないよう客に口頭で注意を呼びかけた』と書かれている。

 また、中国新聞の記事には『事故の直前、客の小学三年男児が水中に落ちていたふたを見つけ、近くにいた女性監視員に渡し、別の監視員が事務所の現場責任者に伝えた』とも書かれている。

 これらの情報を時系列に整理すると、以下のとおりとなる。
①午後1時半頃、小学生の利用客が排水口のふたが外れていることに気づき、外れたふたを女性監視員に渡す。
②その事実を別の監視員が現場責任者に報告する。
③現場責任者は監視員に対して「ふたの緊急補修」の指示はしたが、「利用客をプールから出す」指示はしなかった。
④現場責任者からの指示がないため、監視員は利用客をプールから出さず排水口に近づかないよう口頭で注意するにとどまった。
⑤午後1時50分頃、今回の事件が起きた。

 ふたが外れている(写真参照)のが分かってから事故が起きるまで約20分間。その間、流水プールを担当していた5人の監視員も現場責任者も、誰一人として「危険だからまず利用客をプールから出そう」とは考えなかったのだろうか。
 ふたを緊急補修するためには、利用客をプールから出すこととポンプを停止することが当然必要になると思うのだが、こららの指示を優先すべきとの判断が出来ない管理会社に、本当に安全管理を任せて問題なかったのだろうか。
 そう考えると、『学校を含めた市営の全プールを使用中止にする』という市の判断がもう少し早ければ、と悔やまれて仕方がない。

 今日の中日新聞朝刊には、子供の危機管理に詳しいコンサルタント会社「クライシスインテリジェンス」代表の談話として『本来、安全を最優先に考えて運営しなければならない施設で、なぜ今回のようなケースが起きたのか十分な検証が必要だ。(中略)業者への外部委託の妥当性も含め、最終的には行政の姿勢も問われる。コスト削減のために安全性が軽視されていたなら、なおさら許されないことだ』と紹介されているが、まるでデジャブーのようにどこかで聞いた指摘である。

 JR、エアライン、エレベーターにパロマ等々、事故が起きるたびに同じような指摘が繰り返されているが、具体的な成果が表だって見えない安全コストをいかに評価するか。
 この術を見出せない限り、同じような事故は後を絶たないだろう。

by azarashi_salad | 2006-08-01 10:47 | 社会 <:/p>

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