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【犯罪被害者の過失に焦点をあてるニュースについて考える(3)】

●【犯罪被害者の過失に焦点をあてるニュースについて考える(2)】では、被害者側の過失に大して違いがなくても、マスコミの焦点のあて方(事実関係の取捨選択)次第で、淡々と事実のみを伝える無味乾燥な記事にもなれば、読者が「けしからん」と思うような批判記事にもできることが問題だ、と書きました。

○では、どうしてこのような違いがでてくるか色々と考えてみたのですが、どうもこれはマスコミだけの問題ではなくて、事実関係を公表するときの教育委員会と企業の広報スタンスの違いが大きいのではないか、と考えるようになりました。

 つまり、いずれの記事も記者が自らの足で稼いできた情報ではなくて、教育委員会や企業が公表するデータを基に記事にしているだけだから、もしかすると記者も公表する側が意図するままの記事を書かされているのではないか、ということです。

 前回の2件の事件をはじめ、教育委員会が公表した事実関係(④、⑤、⑦、⑧)とそれ以外の企業等が公表した事実関係をよく見比べて下さい。

 教育委員会は、そもそも「不祥事」を伝える観点から事実関係を公表していますので、教師個人の過失を思わせる事実関係を必要以上に詳しく公表し、組織全体で盗難被害の責任を負うのではなくて、教師個人の責任を強調しているような気がします。
 これに対して、企業が公表する事実関係では社員個人の過失だけを強調するのではなく、企業という「組織全体」で盗難被害の責任を負うような姿勢が感じられます。

○もう一度誤解がないようにお断りしておきますが、私は、盗難事件に限らず「犯罪報道」の基本的な姿勢として、誰が被害者であっても、最も非難すべき悪意ある犯罪加害者に焦点を当てずに、被害者側の落ち度(過失)ばかりに必要以上に焦点を当てて批判するような報道は好ましくないと考えています。

 なお、個人情報保護の重要性を広く読者に伝えるなど、どうしても被害者側の意識をあらためさせることが必要な記事を書く場合には、頭ごなしに「けしからん」や「管理が甘い」と被害者側の過失を批判するのではなくて、前回の私の記事にトラックバックしてくれた方々の記事のように、詳細なデータを紹介した上で「啓蒙」するような「やさしさ」を感じさせる報道であってほしいと思います。

 その意味からも、「批判」の意見を込めた報道をする場合は「役所」や「企業」が公表する事実関係だけにとらわれるのではなく、記者自らが公表されたこと以外の事実関係をもっと調査した上で、「批判」する記事が望ましいのか「啓蒙」する記事の方が望ましいか、よく検討することが望まれるのではないかと思います。

○4月から施行された「個人情報保護法」は、個人情報の取扱いについての個人責任を問う法律ではなくて、あくまで個人情報を扱う役所や企業などの組織としての管理責任を問うための法律です。
 その趣旨から言っても、まず問われるべきは組織としての盗難防止対策の有効性であって、故意に個人情報を盗んだ犯罪者も、過失で個人情報を盗まれた盗難被害者も区別なく批判するような記事だけは、止めて欲しいなあと思います。

 蛇足ですが「ノートPCのワイヤロック」については、PC関連に詳しい業界の方々にしてみれば一般的なようですが、毎日新聞磯野記者のブログ「上昇気流なごや」によると、新聞関係者にあってもまだまだ一般的ではないそうです。

 したがって、そのような対策に焦点をあてる場合には「決められていたことをしていない方が悪い」という固定観念ではなく、「その普及率はどうなっているのか」「本当にワイヤロックで個人情報は守れるのか」といった視点から、もう一歩踏みこんだ報道を期待したいと思います。(誰も普及率をご存じないようなので調査報道に期待しています)

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【4/24一部修正】
 最初にアップした文章に少し誤解を招く表現があったため一部修正しました。

by azarashi_salad | 2005-04-23 13:33 | 私説

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