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☆現役記者のご意見(2)

●ご本人の了解がとれましたので、『上昇気流なごや』の磯野記者から頂いたメール(全文掲載)をご紹介します。
毎日新聞・磯野です。
 報道の現場にいる者の感覚で言えば、共同通信の見出し「児童の成績控えなど盗難 教諭がパチンコ中に」に尽きると思います。どう説明したらいいかな、最初に見出しが決まって、原稿が後からついてくる、というような。いい悪いの議論はとりあえず別としてです。
 学校の先生がパチンコをやってはいけないとは思いませんが、結果として、児童の成績の控えが盗まれたということになると、けしからん、という感情が勝ってしまう。新聞記事はこのような情緒的な要素で書かれることがしばしばあります。新聞社側の言い分とすれば「庶民感情からすればこういうことじゃないですか」というような。
 おっしゃるように、被害者なのに非難される。共同の記事も毎日の記事もこの先生を匿名にしていますが、実名を出したら、全国から非難が集中するでしょう。実際、この学校では当然問題になっているでしょうし、この先生はPTAあたりからボコボコにされているかもしれません。
 さて、では自分だったらどう書くか。やっぱり、パチンコ中に、というところが主見出しになるような書き方をするのではないか。ただ、この教諭が車上盗の被害者であることをもう少し強調する書き方ができないか。被害届けを受理した前橋署が捜査していると書くだけで多少印象が違うし、パチンコ駐車場での車上盗がどのくらい起きているか、ほとんど検挙されていないとか、そういうことも含めてです。
 もっと重要なのは、教育現場で個人情報がどのように管理されているのか、という問題。この先生はアホだなぁ、ドジだなぁ、で片付くことではないでしょう。特に法律の施行を目前にしているこの時期においては。
 初報でこの程度の行数でしか書けなかったとすれば、紙面に余裕があればですが、続報で問題点を整理する、という手法があります。その後の学校の対応、そもそも教育現場での個人情報の取り扱い、それから、この先生がどのような状況に置かれているか、車上盗の捜査の進展、等々。
 この記事を書いたのはおそらく入社間もない新人記者でしょう。デスクがこのように書かせたのは目に見えるようです。後日談を書いてみたらどうか、と指示できるデスクがどのくらいいるか。そんなことをやっているひまがあるなら、ほかの取材をしろ。そう言われるかもしれませんね。
 長くなりました。現役記者への投げかけだったので、とりあえず書いてみました。歯切れが悪いのは自覚しています。
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磯野 彰彦

○『上昇気流なごや』の磯野記者からのメールより
(△記者の意見、▼私の意見)


△最初に見出しが決まって、原稿が後からついてくる
▼私は、ここが問題の発端のような気がします。
 「見出し」は、記事中で読者に伝えたいことを一瞬の「イメージ」で伝えなければならないため、ややオーバーな表現になりがちだと思います。
 その「イメージ」通りに記事を書こうとすると、伝えるべき事実関係を取捨選択する中で誤った判断をすることもあるのではないでしょうか。

△結果として、けしからん、という感情が勝ってしまう
▼前回の記事を読んで私が感じたことは、あの記事からは「教師はけしからん」以外の何も伝わってこないということです。
 上の「見出し」とも関連していると思うのですが、いったん「けしからん」という感情で記事を書き始めたため、「誰が被害者で誰が加害者」という視点や「個人情報保護法」の運用上の問題といった視点が置き去りにされてしまったのではないでしょうか。

△新聞記事はこのような情緒的な要素で書かれることがしばしばあります
▼私は、記事から伝わってくるこの「情緒的な要素」に、昨今のマスコミ批判の原因があるような気がします。
 ブログで自らの意見を発信するようになってから気づいたことですが、感情的な意見は反対の感情的な意見を呼び込みます
 記者の意見もひとつの意見であり、決して国民全てを代表した意見ではありません。にもかかわらず、新聞報道やテレビ報道で意見が発信されれば、私たちは反対の意見を訴えようがありません。
 したがって、様々な視点からの意見を公開した上で、読者一人ひとりに考えさせるような報道のあり方が、いま求められているのだと思います。

△重要なのは、教育現場で個人情報がどのように管理されているのか、という問題
▼共同通信の佐々木さんのご意見にもありましたが、確かに成績などの個人情報は、住所や氏名などの情報以上に厳重な管理が求められるのだと思います。
 だからこそ、「個人情報保護法」の施行を控えたこの時期に、マスコミとしてどういう問題提起をすべきかについて、もう少し慎重に考えていただきたかったと思うのです。

△この先生はアホだなぁ、ドジだなぁ、で片付くことではない
▼私も「そのとおり」だと思います。だから、前回の記事のような「この教師はけしからん」というメッセージしか伝わらない記事からは問題の本質が正しく伝わらない、という指摘について、ぜひとも受け止めていただきたいと思います。

○磯野さんから今回頂いたメールのおかげで、今のマスコミが抱えている問題が少し理解できたような気がします。
 そして、それは先日の踏切事故や昨今の「日航不祥事」とも関連しているように思いますので、考えを整理した上であらためて記

by azarashi_salad | 2005-04-02 13:24 | 私説 <:/p>

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