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政府が広域処理を進めたい本当の理由

この数日間のついったーでのやりとりで、これまでずっと疑問だった広域処理の本当の狙いがようやく理解できた。その大きなヒントをくれた @RRof3R さんに感謝したい。

広域処理反対派は瓦礫の焼却だけを見ていると本質を見誤る。
進んでいないのは「復興」ではなく瓦礫の「リサイクル」だ。

政府が広域処理を押し進めたい本当の目的は、瓦礫などの汚染資源を薄めてリサイクルを促進することにより、低レベル放射性廃棄物のリサイクル(市場流通)を既成事実化し、これまで日本社会に定着していなかった「クリアランス制度」を一気に定着させることにある。

その背景は、セメントや木材などリサイクル業界の要望と、汚染を希釈して解決したい政府の利害が一致したことだ。これは、クリアランスレベル以下の廃棄物をスソ切りすることにより、今後の廃炉コストを大幅に圧縮出来る原子力ムラの利害とも一致する。(注:原子力ムラについては以下の動画を参照)




政府は瓦礫全体の2割に過ぎない広域処理にどうしてここまで拘るのか、以下の資料から岩手県の瓦礫処理内訳に注目して欲しい。

◎災害廃棄物の広域処理(環境省)

岩手県の県内処理分の大半を太平洋セメントが受注している。県内処理といっても太平洋セメントが引き受けた分は、出来れば同社が県外に多数持っている工場で効率的に処理したいけれど、瓦礫は産業廃棄物ではなく一般廃棄物なので、受入れ自治体の許可がなければ岩手県外に持ち出す事が出来ない。

この許可を得るために有効なのが、瓦礫の広域処理で締結する自治体間協定だ。

つまり、20%の広域処理のために岩手県と全国各地との間で自治体間協定が締結されれば、太平洋セメントが引き受けた岩手県内処理分の瓦礫も県外に持ち出して、同社の県外工場で処理したうえでリサイクル資源として流通させることが可能となる。

【参考】太平洋セメントの国内工場

上磯工場 - 北海道北斗市谷好1-151
大船渡工場 - 岩手県大船渡市赤崎町字跡浜21-6
熊谷工場 - 埼玉県熊谷市大字三ヶ尻5310
埼玉工場 - 埼玉県日高市原宿721
藤原工場 - 三重県いなべ市藤原町東禅寺1361-1
大分工場 - 大分県津久見市合ノ元町2-1
小野田事務所 - 山口県山陽小野田市大字小野田6276
西多摩事務所 - 東京都西多摩郡日の出町大字大久野2650
土佐事務所 - 高知市孕東町25


阪神大震災の瓦礫のリサイクル率は約50%であり、セメントや木材、鉄鋼業界などは今回の瓦礫にもそれを適用したいのであろう。

◎がれき受け入れ「業界挙げて協力」 セメント協会長 (日経)

首都圏の焼却灰が高濃度汚染でリサイクル困難。岩手の現地処理分を請け負った太平洋セメントは、喉から手が出るほど焼却灰が欲しいはず。

◎焼却灰、売り手市場(朝日)

おそらく瓦礫だけにとどまらず、将来的には除染のために伐採した木材とかもリサイクル資源として有効活用したいのではないだろうか。

◎木材リサイクル協会の提言

宮城県の場合は、瓦礫処理を受注した企業の大半が鹿島建設や西松建設、清水建設など大手ゼネコンのJVである。

◎宮城県の災害廃棄物処理に係る入札情報(リンク:宮城県)

県内で埋立て処分される以外の瓦礫は、これらのJVを通してリサイクル資源として全国にばらまかれ、市場に流通することになるのだろう。



一方、これらの汚染資源のリサイクルにより政府が既成事実化したい政策が「クリアランス制度」の定着だ。

クリアランス制度は、2005年には既に法律が成立したが多くの問題点を抱えているため、まだ日本社会には定着していない。(クリアランス制度の問題点については、こちらのサイトを参照して欲しい)

「標準的な原発を解体すれば、廃棄物の量は50数万トンにも上ります。それを下表のように■(クリアランス)部分をスソ切りすることによって、放射性廃棄物として扱うものをわずか2%程度にまで抑えようというのです」

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【参考】放射性廃棄物スソ切り問題連絡会

以下のリンクにも記載されているが、クリアランス制度は事故以前は国民に広く理解されておらず、まだ制度が社会に定着していなかったため、一部の製品でしか流通していなかった。

「廃棄物の再生利用や適切な処分を進めていくためには、国民や地域社会の理解を幅広く得ながら進めて行くことが重要です。このため、制度が社会に定着するまでの間、電力会社では、原子力施設由来であることを了解済みの処理業者に搬出し、電力業界内を中心に自ら率先して再生利用を進めています」

【参考】クリアランス制度(電位事業連合会)

今回の事故で、環境中に大量の放射性物質が拡散したことを受け、政府としては震災瓦礫の処理と一体で汚染資源のリサイクル処理を一気に進め、クリアランス制度の既成事実化を図りたいのだろう。

クリアランス制度が定着すれば、例えば首都圏の高濃度汚染焼却灰も希釈してクリアランスレベル以下のセメントに加工すれば市場に流通することも可能となる。

今の政府が「放射性物質は薄めれば安全」と信じている限り、そうしたことが絶対に無いとは言い切れない。

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さらに、今後の原発の解体においても、クリアランスレベル以下の部分をスソ切りすることにより、廃炉コストを大幅(1/33程度)に抑えることが可能となる。

クリアランス制度の定着にあたっては「レベルが適正か」「無制限か総量制限か」など国民生活に大きく影響する重要課題であり、「痛みの分かち合い」だとか「絆」だとかの言葉で誤魔化して、既成事実化して進めることは許されない。


『ガレキは地球資源』:震災によってでた大量の瓦礫を、毒や分解不能なものは取り除き、土とまぜ、地球資源として植樹地を作ります。土地本来の潜在自然植生による深根性、直根性の主木群を植えます。管理不要でおよそ20年で豊かな森へ。世代交代を重ねながら次の氷河期が来る9000年は保たれます。緑の壁、マウンドを作って沢山の、有効な種類の木を植えよう!




瓦礫の広域処理も、『瓦礫は地球資源』は同じ考えだが、政府はそれをリサイクル資源として流通させることにより、事実上クリアランス制度を定着させたいところが、宮脇教授の考えとは大きく異なる。

結論として、やはり食品の汚染基準みたいに正面からリサイクル資源のクリアランスレベルについて国民に問わない限り、瓦礫の広域処理に賛成することは出来ないということになる。

【参考】各国における放射性廃棄物規制除外(クリアランス)の動向 (11-03-04-05)

日本は原子力開発が先進他国より十数年、開始が遅いので、その分必然性がでるのが遅かったのです。(@BB45_Colorado さんコメント)

【追記】
悪い面ばかりでなく良い面も一言。
クリアランス制度が定着すれば、リサイクル資源はメーカーによりクリアランスレベル以下が保証されるので、悪徳業者による高濃度汚染リサイクル資源の市場流通や不法投棄を押さえることが出来る。政府の目的にはそれもあるのだろう。

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by azarashi_salad | 2012-03-23 09:15 | 健康 <:/p>

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