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【企業モラルの崩壊について考える】

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●先日の記事◇景品表示法違反(優良誤認)と詐欺の違いとは?(あざらしサラダ:10月4日)『同じ虚偽表示でも、「サクランボ」(実際はリンゴ)は景品表示法違反で、「森伊蔵」(実際は焼酎)は詐欺罪(懲役3年)である。この違いは一体どこからくるのだろうか』と書いたところ、おおた葉一郎さんから●贋作「さくらんぼグミ」と贋作「森伊蔵」の差は(おおた葉一郎のしょーと・しょーと・えっせい:10月6日)の記事をトラックバック頂いた。

○おおたさんは、この二つの事件の扱いの違いについて、①公正取引委員会と検察の縄張り、②被疑者の比較、③犯罪の性格、の3つの観点から問題点を整理して考察してくれた。

 まず、①公正取引委員会と検察の縄張りについてだが、おおたさんは『事件なんてマスコミで報道される部分は一部だけだし、捜査だって完璧かどうかわからないので、すべて憶測を含むことになるが・・・』と前置きした上で、『グミ事件の場合、景品表示法違反(優良誤認)で排除勧告を受けたのだが、だからといって詐欺罪を免れたことにはならないのだが、たぶんこれで終わりだろう』と推測している。
 つまり、公正取引委員会と検察という行政組織同士の縄張り争いがあって、サクランボ事件は公正取引委員会が手を付けたのだから検察は出てくるな、ということのようである。

 しかし、ここで私は一つの疑問を抱く。

 これは私の憶測に過ぎないが、サクランボグミの虚偽表示が発覚しそうになったとき、先に公正取引委員会に情報提供した上で景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出させることにより、詐欺事件としての立件を免れることが可能ではないかということである。
 いうなれば、「縦割り行政」を「盾」にとった企業防衛ということだが、もしそうであるならば、公正取引委員会が個人に対して排除命令を出すことは考えにくいから企業犯罪の場合のみ、軽い量刑で済むような抜け道が用意されていると言うことにはならないだろうか。

 これについておおたさんは、②二つの事件の被疑者の比較について『グミ事件は大会社が登場。店頭上場企業「タカチホ(卸売り)社」と「札幌グルメフーズ社(メーカー)」。タカチホの売上は年間120億円もあり、長野県の本社以外に8道県に営業所をかまえている。お土産品卸の大手のようだ。一方、森伊蔵事件はほとんど個人の犯罪』と指摘して、被疑者の違いにより行政当局の扱いが異なる可能性について言及している。

 さらに、③双方の犯罪の性格について『森伊蔵事件はネット詐欺としての性格が強く、発見した顧客から警察へ訴えられたものと思える』と推測し、一方のサクランボ事件については『ユーザー側の被害者が特定されにくいわけだ。グミの中身がリンゴであっても、烈火のごとく怒る人はいない』と推測。
 このように、ユーザー側の反応により量刑が左右される可能性についても言及している。

○これについて、前回の記事にコメントを寄せてくれたbroomさんは『消費者の一番の武器は「風評」ということのようです』と述べてくれたが、消費者の武器が「風評」ということは、始めに騙された方は浮かばれないし、ましてや、数百円のために訴訟を起こすとも思えない。

 飯田経夫氏(経済学者)は、著書『日本の反省』の中で『バブルの渦中で金融機関や一部企業が行ったしたい放題は無規律の典型だった。・・・「規律」とは、いわば自分が自分に対して課する「規制」だろう。その必要性を全く無視するかのような「規制緩和」論は、明らかにどこかが決定的におかしい』と述べているが、私も飯田氏のこの意見に賛成である。
 このように「規制を強化すべき」のような発言をすると、ややもすると多くの方から反論が帰ってきそうだが規制緩和政策が強化されて以来、儲けるためには何をやってもいいと考えるモラルのない企業が横行し、結局は消費者が犠牲になっているように感じられてならない。

 多くの企業経営者は、おおたさんが最後に語っている『ユーザーにわからないからと思って、不当表示する考え方は「悪魔的行為」という範疇だ。また信用を失った者に到来するものは、厳しい経営危機という「本物の悪魔」であるということを忘れてはならない』との言葉に、もっと真剣に耳を傾けるべきである。

 今の日本社会は、個人も企業もモラルの崩壊が激しいように私は感じているが、個人に対しては路上喫煙を禁止する条例の制定や中学卒業までは性交渉をしないよう都条例で規制することが検討されるなど、モラルの低下に対抗する形での新たな規制が強化されようとしている。
 しかし、私は個人に対するこのような規制を強化する前に、利益を得るために不正が横行する企業に対する規制の強化こそ真剣に検討すべきと考える。
 多くの企業経営者は、自由な経済活動を奪われたくないのであれば、このような企業モラル崩壊について、もっと業界全体で真剣に取り組むべきではないだろうか。

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by azarashi_salad | 2004-10-07 08:43 | 私説 <:/p>

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