▽個人ブログじゃないんだから

○仮にも「ニュース」を名乗るなら、頼むから少しは調べてから書いて欲しいと思う。
 何のことかというと、このニュース。

●軍用機にも「人」が乗ってるんだ!――米軍機の釧路空港緊急着陸【PJ 2007年11月09日】
 米国から飛び立った米軍所属の小型ジェット機が8日午前、給油のため北海道の釧路空港に着陸した。高橋はるみ道知事は「着陸したことは遺憾。自粛を強く求めていきたい」などとするコメントを発表した。(時事通信社記事より抜粋)
 記事によると、この小型ジェット機は向かい風などの影響で燃料が不足して、緊急に着陸する必要があった。米軍からは当初、道が所管する中標津空港への着陸を希望する申し入れがあったが、「日米の共同訓練時を除き緊急性がある場合以外は自粛を求めている」として道が受け入れなかったため、国が所管する釧路空港へ変更を余儀なくされたという。
 高橋はるみ北海道知事は遺憾とのコメントを出しているが、事態をよく考えていただきたい。飛行中の航空機が燃料不足に陥っている状況のどこを見て「緊急性がない」と判断しているのか。
 飛行当日は風向きなどの影響で燃料が足りなくなるので――という理由で米軍から6日に申し入れがあった。事前に分かっていたこととはいえ、空中で燃料不足に陥ることは緊急事態そのものである。空中給油はできないから緊急的にどこかへ降りる必要があったと考えれば、北海道知事の判断は正しくない。
 「米軍機」というだけで感情的に排除していないか? 軍に属する航空機も、乗っているのは人間である。戦争をやりに来たのではない。もちろん北海道を攻撃に来たのでもない。
 ただ「燃料が足りなくなるから降ろさせてくれ」と頼んでいるのだ。乗員には生命にかかわる重大事である。それを「緊急性がない」だの「軍用機だから」だの四の五の理屈をつけて「降りるな」と突っぱねるとは、人としての優しさが全く感じられない仕打ちではないか。
 高橋はるみ知事は、もう少しわが身に置き換えて考えてほしい。【了】

○ここに書かれている内容こそ「感情的」な批判以外の何ものでもなく、事実誤認も甚だしい。

 この筆者の主張は至ってシンプルだ。

 米軍機とはいえ人間が乗っているのだから、緊急着陸を拒否することは非人道的であり、高橋知事の判断は正しくないというものだが、この主張には明らかな「事実誤認」がある。

 この米軍機の着陸は、本当に「緊急」だったのか。
 もちろん、この米軍機がエンジントラブルや天候不良で緊急着陸しようとしたにもかかわらず拒否したのであれば、確かに非人道的と批判されても仕方がないが、そうではない。

 記事にも書かれているとおり、この米軍機は始めから釧路空港を給油ポイントとして、「予定通り」飛行しているのであって、強引(無謀)な計画でこそあれ「緊急性」などどこにもない。

 釧路空港からあと少しの距離を飛ぶだけで、青森県には米軍三沢基地があり、北海道内には自衛隊の千歳基地もある。
 アラスカから日本に飛んでくるのに、釧路も三沢も千歳も大した違いはないにもかかわらず、この米軍機はどうして「わざわざ」中標津空港や釧路空港といった民間空港で給油しなければならなかったのか。

○そもそも、米軍はどうしてこのような計画を立てたのか。

 その理由はおそらく、来年夏の「北海道洞爺湖サミット」の際、北海道の玄関口である千歳空港に何か問題があった場合は、釧路空港や中標津空港をバックアップ空港として利用することがあるかもしれないから、どのような空港なのか事前に情報収集しておきたかった、というのが本当のところではないかと思う。

 そして、高橋知事も「緊急着陸」とは名ばかりで、実際のところは米軍による「諜報活動」と分かっているからこそ、これほどきっぱりと遺憾のコメントを発表したのではないだろうか。

○加えて、空港施設を維持管理するためには、滑走路の補修費用や航空レーダーなどの整備費、管制官など空港職員の人件費などの多額のコストがかかっているが、これらのコストは全て私たちの税金や釧路空港を利用する乗客の運賃などで賄われている。

 にもかかわらず、日米地位協定の第5条では「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によつて、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる」と規定されており、米軍はこれらの施設をタダで使用できるため、結局は私たちがそのツケを払わされていると言うことも理解しておく必要がある。

●日米地位協定(第五条)の全文(:外務省HPのリンク:PDFファイル)

○最後に、この方が主張するとおり「我が身に置き換えて」考えてみよう。

 実は、沖縄本島には成田空港よりも大きい(4000m級の滑走路を二本有しており、恐らく日本で最大の)嘉手納空港(基地)がある。

  で、成田空港からフィリピンのマニラ空港まで飛行する際、燃料タンクの小さな飛行機では沖縄あたりで一度給油が必要になるが、あらかじめ嘉手納空港で給油させて欲しいと申請して果たして米軍が快く許可してくれるだろうか。

 もちろん、エンジントラブルや天候不良の場合は緊急着陸が許可されるだろうが、給油だけのために事前に申請しても、「那覇空港を利用すればいいだろう」と一蹴されるだけではないだろうか。(嘉手納基地自体が本来は沖縄県民の土地であるにもかかわらず)

○これらの情報は、ちょっとググれば誰でも入手できる情報なので、個人ブログではなく仮にも「ニュース」を名乗るのであれば、少しは調べてから書いてはどうかと思う。

 隣には親戚の家(千歳)があり、三軒向こうには別荘(三沢)があるにもかかわらず、「緊急だから」と言って「イヤだ」といっているヨソ様(北海道)の家のトイレを勝手に借りに来る迷惑なご近所さん、と言えば少しは理解していただけるだろうか、笑。
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by azarashi_salad | 2007-11-09 22:51 | 社会 | Comments(2) <:/p>

Commented by 彰の介 at 2007-11-10 00:56 x
 あざらしさん、お久しぶりです。彰の介です。
このニューステレビで見ながら、おかしいなあ?なんかおかしい、と思っていました。要するに、このPVニュースの氏と同じことを考えていたのです。燃料切れの緊急着陸に対して、なんで北海道知事が遺憾なのかなあ?よくわからんと思っていました。このあざらしさんの記事を読んでから、改めてネット上のこのニュース記事を読み直してやっと事情が飲み込めました。
 テレビもいい加減に聞いていたのでよく覚えていませんが、印象としてあらかじめ申し入れられたものという表現は全く無く、緊急着陸という言葉が強調されていたような気がします。しかし、コレでは全く違う話になってしまいますね。
Commented by azarashi_salad at 2007-11-10 07:20
♪彰の介さん、こんにちは。
あらかじめ予定されている「緊急着陸」ってところがミソですよね。
どうして誰も突っ込まないのか、笑。

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