△「ただ働き」大流行の予感

●浄水場全職員が314万円寄付 北見市断水 時間外を返納(09/12 08:05)
 【北見】北見市の大規模断水に伴い市職員らに合計一億円を超す時間外手当が支給され、市民の批判を浴びている問題で、水道事業を担当する企業局浄水場の場長を含む全職員八人が十一日、計三百十四万円を市に寄付した。同手当を受け取った一般職員が返納に応じた初のケースで、同市では他部局にも「返納に応じざるを得ない」との空気が広がってきた。
 断水をめぐり市職員に支給された時間外手当は、六、七月の二カ月分で総額約八千五百万円。また、給水活動などに携わった北見地区消防組合職員の時間外手当も千五百八十九万円に上る。
 断水では、管理職の浄水場長には時間外手当は支給されていないが、一般職七人には六、七月の二カ月分で計約八百三十万円が支給され、一人当たりの最高額は約百四十六万円に上った。企業局によると「(場長を含めた職員らが話し合い)断水対策経費に役立ててほしい」と寄付の形で返納の申し出があったという。
 六月の断水については、専門家による市長の諮問機関が浄水場の対応ミスが原因と答申。今回、その当事者が手当を返納したことで、ある幹部は「全庁的に返納に応じざるを得ない」との見方を示している。
 手当の自主返納については、神田市長が十日の部長会議で要請し、各部局で検討。一方、手当の支給対象ではない市特別職七人が計百五万円、企業局の管理職十四人が計五十万円をそれぞれ市に寄付している。

○前回のエントリー(▲問題は手当じゃなくて時間だろう!)で取り上げた北見市企業局浄水場の場長を含む全職員が、8人で計314万円の時間外手当を返納したそうだ。

 そもそも、月400時間の残業という行為自体が異常なのだが、この件の報道を見る限りでは、市の幹部も与野党議員も記者も市民も、みんな手当さえ支払わなければ、こうした残業をさせても構わないと考えているところが、私には恐ろしく思えてならない。

 実際に、自分が月400時間の残業を命じられたら、さらにその手当を返納しろと批判されたらどう思うか、想像力が無いにも程がある。
 そもそも、本当に月400時間もの残業をさせる必要があったかどうかの検証もないまま、手当の額にのみ注目して返納を煽る方々は、人として何か大事なものを見失っていないだろうか。

○これについて、M・Focusさんのブログ記事こんな視野の狭い記事を紙面に載せる記者とデスクは職を辞してはいかがでしょう。では以下の通り指摘しているが、私も全く同感である。
 執筆した記者と、原稿を見たデスクは、月394時間の時間外勤務という非常識さに、まったく問題意識を持っていない。あなたたちは、月に約400時間余計に働くって変だと思わないか?
 頼むから記者ならここに気付けよ!400時間ってのは過労死の危険水域を軽々と超えているんだぜ。
 自主返納よりも、下手をすると職員が倒れたり死んだりするような無茶苦茶な働かせ方をさせた管理職や市そのものの杜撰さが重大だろう。そこをスルーして「残業代返せ!」と指弾する資格が、あなたたちにはあるのか?
 カラ出勤ならまだしも、超長時間を実働した人間に「残業代を全部返しなさい」というのが、もしかして「規範意識」なのか?
 それってかなり人を馬鹿にしているように僕は思う。金額に気を取られ義憤に駆られている市民も、冷静になってほしい。「ただ働きするのが当然」と他人に言われたら、どんな気持ちになるというのか。

○もちろん、こうした非常時だから浄水場には、組織として「24時間休みなし」の体制が求められていたのかも知れないが、管理者に求められる役割は、部下の健康に配慮しながら組織に与えられた仕事を適切にこなすこと。
 だから、そのために他部署からの応援を求めたり、自ら現場に入って交代制で対応するなど、マネジメントしなければならない

 そして、上の記事に書かれているとおり浄水場長を含めて8人もの職員がいるのであれば、そうした対応は十分可能だったと思える。
 にもかかわらず、そんな当たり前のことができなかった管理者の責任は重大と言わざるを得ない。

 月400時間の残業が事実だとしたら限りなく「拷問」に近いし、もしこれが偽りなら「手当の水増し請求」ということで、いずれにしても市長以下の管理職は管理者としての資質に欠けることが明らか。したがって、彼らの管理責任こそ追及されるべき問題だと思う。

○一方、毎日新聞北海道支社の記者ブログでも時間外手当てが113万円!とのエントリー内で「毎日4時間しか寝ないで31日間、休みもなく働かされる。こんなことをされたら、いくら体力自慢でも2週間もしないうちに頭が朦朧とし、正常な判断ができなくなるだろう。なぜ、疲れていたら午前中は睡眠をとらせるとか、代わりを用意して時々、早く帰宅させるとか、できなかったのだろう。これは時間外手当の問題というより、このような勤務を強いた上司の責任問題ではないだろうか。」と指摘しているが、そのとおり。

 だったら、どうして下のような記事になるのか、私にはまるで理解できない。

●北海道・北見の断水:時間外手当 特別職ら155万円寄付 市長「自主返納」要請考え
 北見市の大規模断水に伴い市職員に総額8468万円の時間外手当が支給された問題で、神田孝次市長が10日、職員に自主返納を求める考えを示したことが分かった。川崎英勝副市長ら特別職7人が同日、15万円ずつ計105万円、水道行政を担当する企業局の管理職14人も計50万円を寄付しており、返納に拍車がかかりそうだ。
 時間外手当は8月、延べ1398人に6、7月分が支給された。このうち、同局職員3人には100万円以上が支給され、最高額は112万9000円に上った。市民の間から「生活に大きな損害や影響が出たのに、職員に満額の手当を払うのは納得できない」と批判が噴出。神田市長は同日の部長会議で「良識ある判断に基づき手当の一部を自主返納するよう希望する」という趣旨の発言をしたという。
 特別職7人は寄付の目的として、「断水対策に要した経費の一部として役立ててほしい」としている。神田市長は公職選挙法で寄付を禁止されているため、減給処分を受ける見通し。【高橋正博】毎日新聞 2007年9月11日 北海道朝刊

○この記事では、月394時間という非常識な残業時間や「このような勤務を強いた上司の責任問題」という部分に全く触れられておらず、まるで率先して返納した管理職たちを評価しているようにすら読めるのだが、彼らの責任問題は一体どこへ消えてしまったのだろうか。

●厚労相 残業代ゼロ法案を「家庭だんらん法案」に(9月12日10時22分配信 毎日新聞)
 舛添要一厚生労働相は11日、同省が法案化を見送った、一部事務職の残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、「家庭だんらん法案と書け、と(事務方に)言った」と述べ、同制度導入に向けた検討を続ける考えを示した。同相は「残業代が出なかったら早く帰宅する動機付けになる」と強調し、「横文字を使うからマスコミに残業代ゼロ法案と書かれ、一発で終わり。『パパ早く帰ろう法案』とか『バカな課長の下で仕事するのはやめよう法案』という名なら通る」などと語った。
 ネーミングの変更で国民に与えるイメージも変えてしまおう、との論法だが、野党側はさっそく反発している。舛添氏の発言について子育て問題に詳しい民主党の蓮舫参院議員は「カタカナ言葉を使う安倍首相が不評だからこんな言葉にしたのだろう。舛添さんは永田町言葉を使わないので斬新で親近感はわくが、斬新さに見合う行動をとっているのか。名前と内容が本当に見合う法案を考えるべきだ」と述べ、批判した。

○折しも、法案化を見送った一部事務職の残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、舛添厚生労働相が『バカな課長の下で仕事するのはやめよう法案』という名なら通る」と語ったそうだが、今回の北見市の例などは、まさにバカな管理職のために非常識な残業をさせられ、おまけに手当まで返納させられたいい例である。

 こうした非常識な残業を野放しにしたまま、「ただ働き」を容認するような世論を煽られては、まともに働いている多くのサラリーマンにとってもいい迷惑。

 したがって、法案を作るなら野放しとなっている「ただ働き」(=違法行為)を無くすためにも、まずは使用者(管理者)が命令できる残業時間に上限規制(厚生労働省は月80時間を過労死ラインとしている)を設けることが先だろう。
 その上で、上限を超えるような残業を命令した使用者(管理者)には、厳格な罰則規定を設ければよいだけのこと。

 例えば、おかにゃんさんがブログ●家族団らんを増やすなら,逆に「サービス残業禁止法」では(2007年09月12日 01時29分35秒 / 政治・選挙)で述べているような、現行労働基準法の罰則を更に強化した「サービス残業禁止法」をなんてのも一つの方法だろう。
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by azarashi_salad | 2007-09-15 09:50 | 社会 <:/p>

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