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▼競争原理と不正行為の関係

●<学力テスト>障害持つ児童の答案を採点から除外 足立区(7月7日22時32分配信 毎日新聞)
 東京都足立区教育委員会は7日、昨年4月に区が独自に実施した学力調査(テスト)で、トップの成績の小学校が、保護者の了解を得ずに情緒障害などのある児童3人の答案を採点対象から除外していた、と発表した。区教委は「保護者に説明せずに不適切だった。申し訳ない」とコメントした。
 区教委によると、学力調査は、小学2年~中学3年生を対象に04年度から区が独自に実施し、各学校ごとの順位を公表している。この学校は、05年度は44位だったが、06年度はトップになった。
 3人はいずれも6年生(当時)で、情緒障害などが見られる。普通学級に在籍しているが、週に何回かは別の学校の特別なクラスに通っていたという。
 3人はテストは受けたものの、「文章を理解する力が通常より難しい」などの理由から、校長の判断で採点対象から除外した。区教委は事前相談や保護者の了解があれば、問題の理解が難しい児童の採点除外を認めているが、この学校はその手続きをしなかった。校長は「怠った」と説明しているという。3人の児童の親のうち2人は校長の説明に納得していない。
 同区では、学校選択制を02年度から実施しており、成績の上位校に入学希望者が集まる傾向にある。この学校は、誤答している児童の机を教師がたたくなどの疑惑も指摘されているといい、区教委は、さらに調べる。区教委は「児童に対する配慮」を理由に、学校名は明らかにしなかった。

○子どもたちの学習効果の把握と学習意欲の測定を目的とした「学力テスト」において、障害を持つ児童の成績のみを校長の独断で排除していた。

【参考】
●平成18年度「足立区学力向上に関する総合調査」の結果(足立区のHP)
●平成18年度「足立区学力向上に関する総合調査」の結果(PDFファイル)


 随分ひどい話であるが、そもそもどうしてこのようなことが起きたのか。
 この学校の校長は「(手続きを)怠った」と説明しているらしいが、明らかに意図的な不正工作であり何か意図があるだろうと思って調べてみたら、足立区では一時、「学力テスト」の結果により予算に格差を付ける方向で検討していた。

●学力テストで予算に差 足立区教委、小中学校4ランクに(2006年11月04日08時01分:asahi.com)
 東京都足立区教委は、区立小中学校に配分する07年度予算で、都と区の教委がそれぞれ実施している学力テストの成績に応じて各校の予算枠に差をつける方針を固めた。小学校計72校、中学校計37校をそれぞれ4段階にランク分けし、最上位は約500万(中学)~約400万円(小学)、最下位は約200万円にする予定。都のテストで同区が低迷していることなどから、学校間競争をさらに促す必要があると判断した。


○足立区教育委員会は、上記の方針を発表した直後に「学力の格差が広がる」「学力の高いところではなく、低いところを手厚く支援すべきだ」などの反対意見が相次いで寄せられたことから、朝令暮改のごとく方針を撤回した。

●東京都足立区:学力テストで予算格差の方針撤回(毎日新聞 2006年11月7日 20時53分)
 学力テストの結果で区立小中学校の予算に差をつける方針を示していた東京都足立区は7日、テスト結果を反映させないことを決めた。同日開かれた区議会文教委員会で内藤博道教育長が明らかにした。同区には「学力でランク付けするな」など反対意見が70件以上寄せられ、区教委は「実施するのは困難」と判断した。
 これまでの方針は、07年度から従来の学校への予算とは別に、学校独自の取り組みを支援する「特色ある学校づくり予算」を活用。都と区が年1回実施する学力テストの平均点を中心に、学校をA~Dの4段階にランクを分け、Aは約500万円、Dは約200万円と最大約300万円の差をつけ、外国人講師派遣などへの支援をする予定だった。
今後は、ランク付けや金額の設定もやめ、代わりに、学校から申請された特色ある教育内容や金額を1件ずつ評価・審査する。
 区教委によると、先週末から「学力の格差が広がる」「学力の高いところではなく、低いところを手厚く支援すべきだ」など反対意見が相次ぎ、6日までに電話やファクスで27件、電子メールで46件が寄せられた。賛成意見は数件だった。
 根本優・教育政策課長は「学力の低いところに予算をつけないわけではないが、誤解が広まってしまった。今後もテストを基準に予算配分することはない」と話した。


○直後に撤回されたとはいえ、足立区教育委員会が「学力テスト」の結果による予算方針を発表したのが2006年11月、今回問題となっている「学力テスト」が行われたのが2006年4月で、同年7月には「学力テスト」の結果がとりまとめられていた。

 一方、この校長は足立区教育委員会で議論検討されている予算方針についても当然知っていたのだろう。そのため、少しでも多くの予算を獲得しようと考えて今回のような不正行為を思いついたのではないか。
 結果を出すために知恵を絞れと言えば、こうした歪んだ方向で小細工する人間が多々存在するのも事実である。
 だとすれば、こうした不正行為を生み出すきっかけを作った足立区教委にも、責任の一端があると言うべきだろう。

○なお、足立区教委は生徒への配慮を名目に学校名を伏せているが、今回の事例はミスではなくて意図的な不正行為であることから、私は校長名を伏せることは適切な対応ではないと考える。
(ただし、足立区がHPで公表している資料を調べれば、2006年度の学力テスト結果がトップの小学校名はすぐに分かることだが)

 このように、お金(予算、利益)を得るためには多少の不正をしても構わないという考え方は、ミートホープの食肉偽装問題と根が同じである。
 だとすると、市場原理、競争原理の蔓延がこうした不正を生む土壌になっている、と私たちは考えるべきではないだろうか
 そして、こうした「何でも競争させればいい」と言う行き過ぎた競争原理は、そろそろ見直す時期に来ているのではないか。

 幸いなことに足立区教育委員会は方針を撤回したらしいが、実はこれと同じようなことが国立大学でも行われようとしており、私たちが今回の事例を「他山の石」として教訓にしない限り、必ず同じような不正が繰り返されるに違いない。

●国立大「競争」に反発 地域貢献や基礎研究考慮を(2007/06/18 15:13 :産経新聞)
 国立大学に配分する運営費に競争原理を導入しようという議論が政府内で高まっている。国の財政状況が厳しいなかでも、日本の国際競争力を高めるためには、先進的な研究や独自性のある教育に強い大学には手厚く資金を配分しよう、というものだ。これに対し、国立大学側は地方を中心に、教育や地道な基礎研究、地域社会への貢献も考慮すべきだ、と反発している。

by azarashi_salad | 2007-07-08 08:49 | 社会 <:/p>

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