△本気で飲酒運転を無くすためには

●【主張】飲酒運転 殺人に等しい凶悪犯罪だ(産経新聞)
 飲酒運転による痛ましい事故がまたあった。酒を飲んだ上での悲惨な事故が、何度も繰り返されることには、あきれ返るばかりだ。
(中略) 
飲酒運転は「悪」という空気を醸成し、「飲んだら運転しない」という当たり前のことを厳守し、徹底させていきたい。また、飲酒運転をしたら免許更新を認めないくらいの厳しい措置も早急に検討したい。
 さらに、危険運転致死傷罪をもっと立件しやすいよう改正することも必要ではないか。現行の法律では「危険運転」を裏付けるための捜査が困難との指摘もあり、これでは何のための法律かわからない。

●社説2 飲酒運転をなくすために(日本経済新聞)
 また飲酒運転による悲惨な事件が発生した。福岡市で、はしご酒をした後の同市職員に追突された一家5人の車が海に転落し幼い3人が亡くなった。昨年も死傷者8人、同18人という2つの大きな事件が飲酒運転で引き起こされている。
(中略)
 交通事故の死者は、なお年間6800人以上いる。けが人は100万人を超える。警察庁の世論調査では82%が「深刻な事態。少しでも事故を減らしたい」と受け止めていた。自動車事故を全くなくすのは不可能にしても、故意犯といえる飲酒運転起因の事故は、取り締まりとドライバーの自覚でゼロにできるはずだ。

●社説:飲酒運転撲滅 「ビール一杯もダメ」を常識に(毎日新聞)
 幼児3人が死亡した福岡市の事故を機に、飲酒運転追放の機運が高まっている。何の落ち度もないのに事故に巻き込まれ、幸せな暮らしを台なしにされた被害者や遺族の無念さや悲しみは、限りもない。加害者にとっても、安易な運転の代償は大きい。この際、飲酒運転への寛容さや認識の甘さを一掃し、運転する以上は絶対に酒を飲まない、とのルールを確立し、二度と悲惨な事故を起こさせないようにしたい。
(中楽)
 飲酒運転で検挙された職員の処分を厳格化させる地方自治体が相次いでいるのは、歓迎すべき動きだ。公務員の違反が目立つ上に、民間への影響の大きさを勘案すれば、官公庁が飲酒運転対策を率先すべきは言うまでもない。警察は、飲酒を勧めた者や同乗者にも従来以上に厳しい姿勢で臨むと共に、検問を強化してほしい。尊い犠牲から生まれた機運を逃さず、飲酒運転を撲滅したいものだ。

●[飲酒運転]「無自覚と周囲の甘さが生む悲劇」(読売新聞)
 飲酒運転による重大事故が何度も起きているのに、無自覚なドライバーが多すぎる。
 福岡市で一家5人の乗った乗用車に追突し、3人の幼児を死亡させた同市職員は、居酒屋とスナックではしご酒をした後で車を運転していた。いったい何を考えているのかと言いたくなる。
 警察庁は今月12日から18日までを飲酒運転取り締まりの強化週間とし、一斉検問などを実施するよう都道府県警察に緊急通達を出した。飲酒運転は公道を凶器が走っているようなものだ。厳しく対処しなければならない。
(中略)
 福岡市は、飲酒運転をしただけで懲戒免職とするなど、懲罰規定を見直す方針を明らかにしたが、福岡市だけの問題ではない。官庁も民間の事業所も内部処分を厳しくするなど、本腰を入れて飲酒運転の根絶に取り組むべきだ。

○8月25日夜、福岡市で起きた飲酒ひき逃げ事故を契機に、各マスコミが連日のように飲酒運転撲滅キャンペーンを繰り返している。
 こうした悲惨な事故(事件)を無くすため、現行の法制度が持つ問題点と再発防止対策を検討することは歓迎すべきだが、具体的な対策が違反者(とりわけ公務員)への懲戒免職に矮小化されているのが少し気になる。

 どのような事故・事件でも同じことだが、現状の問題点を正しく分析した上で実効ある再発防止対策を講じなければ、いつまでたっても同様の事故・事件はなくならない。
 上で各紙の社説を紹介したが、各マスコミがどのような現状分析をした上で具体的な再発防止対策を提案しているか、以下に整理してみた。

○産経新聞社説は、「飲酒や酒気帯び運転で摘発されるケースには、公務員や警察官も目立っている。飲酒運転は悪質な犯罪だという認識がまだまだ、欠如している証し」と紹介し、日本社会全体が飲酒運転に対する問題意識が低いと現状分析した上で、①飲酒運転をしたら免許更新を認めない(道交法改正)、②危険運転致死傷罪をもっと立件しやすいよう法改正すべき、の2点について提案している。

 日本経済新聞社説は、「厳罰化だけで飲酒運転を撲滅できないのは現実が証明している」と現状分析しながら、再発防止対策では「取り締まりの強化とドライバーの自覚」で飲酒運転に起因する事故をゼロにできる、と誠に根拠のない主張を展開している。

 毎日新聞社説は、厳罰化の影響で飲酒運転がバレるのを恐れたドライバーが、被害者を救護せずに逃走するひき逃げが増加しており「法定刑のアンバランスが災いしている」と現状分析しているにもかかわらず、再発防止対策では「職員の処分を厳格化させる地方自治体が相次いでいるのは歓迎すべき」、「検問を強化してほしい」としており、現状分析と再発防止対策が結びついていない。

 読売新聞社説はさらに酷く、「厳罰化の抑止効果に陰りがみられる」との警察庁見解を紹介するにとどまり、なぜ「抑止効果に陰りがみられるのか」についての現状分析を全く行わないまま、再発防止対策については「官庁も民間の事業所も内部処分を厳しくするなど、本腰を入れて飲酒運転の根絶に取り組むべきだ」と一方的な持論を展開している。

○個人的には、飲酒運転した者を処分するなというつもりはないが、果たして違反者に対する内部処分の強化だけで、本当に飲酒運転を根絶することが出来るのか疑問である。

 というのも、懲戒処分が抑止効果になるのは公務員に限らず原則サラリーマンであり、農業や漁業、自営業者、企業経営者、フリーのアナウンサーや芸能人、さらには今後団塊世代の大量退職で増えるであろう定職に就かない年金生活者に対しては、何ら抑止効果とはならないからだ。

 現に、「飲酒運転して懲戒免職でないのは甘すぎませんか」というニュースを流した直後に「中村獅童アニメ声優でテレビ復帰」なんてニュースを見せられた日には、マスコミが本気で飲酒運転を撲滅したいと考えているのか疑わしい。

○飲酒運転を根絶するためには、その可能性がある全ての者に対する抑止効果が求められるにもかかわらず、各マスコミがこぞって内部処分の強化を前面に押し出しているのには、何か他の理由があるのではないかと勘ぐりたくもなる。

 また、マスコミでも「飲酒運転は常習性がある」と指摘されているにもかかわらず、防止対策を内部処分の強化ばかりに頼りすぎると、「厳罰化の影響で飲酒運転がバレるのを恐れたドライバーが被害者を救護せずに逃走するひき逃げが増加した」のと同様に、職を失って自暴自棄になった者が増加して飲酒運転や窃盗などの悪質な犯罪が増加し、かえって社会が荒廃する危険性も否定できないのではないか。

 これらのことを考えると、産経新聞社説が提案している「飲酒運転をしたら免許更新を認めない(道交法改正)」が、飲酒運転をする可能性がある全ての者を対象としていること、また飲酒運転が常習性があるという点からも最も実効ある再発防止対策のように思えるのだが、免許所有者が減ると自動車の売り上げ台数が減って困る業界に配慮しているのだろうか、こうした意見については各マスコミは余り大きく取り上げていないようで残念だ。
[PR]

by azarashi_salad | 2006-09-16 12:13 | 社会 <:/p>

<< ▲モンキーカレッジ修了 ▼そもそも「内規」がおかしいのでは >>