▽乱暴に言えばコストと安全は比例する

a0008617_15583211.gif●<プール事故>自治体合併で点検回数減っていた(毎日新聞) - 8月1日
 埼玉県ふじみ野市営プールで戸丸瑛梨香ちゃん(7)が吸水口に吸い込まれ死亡した事故で、管理責任者の自治体による点検が、合併により昨年までの毎日から、2日に1度に減っていたことが分かった。直近の点検は7月28日に行われたが異常はなかったという。県警捜査1課と東入間署は、市や委託されている管理会社の設備管理や点検状況について詳しく調べている。

○元のエントリーで『コスト削減のために安全性が軽視されていたなら、なおさら許されないことだ』とのコンサルト会社代表の談話を紹介したが、上の記事が事実だとすれば、まさに「コスト削減のために安全を軽視」したと批判されても仕方がないだろう。

 管理責任者である自治体職員による点検回数を「毎日から、2日に1度」に減らしていたのは市側のコスト削減策だし、「監視員はほとんど高校生のアルバイト」だったのは施設管理会社のコスト削減策以外のなにものでもない。
読売新聞の記事によると、市からプールの管理を受注した施設管理会社は、監視員業務を別会社に丸投げしていたらしい)

 問題は、こうしたコスト削減策が安全面における担保を置き去りのまま、安直に現場に導入されるところにあるのだが、実はこうした事例は何もプールだけに限らず鉄道会社やエアラインなど、安全重視といいながら多くの現場で当たり前のように行われているのが、コスト・効率重視の今の日本社会である。

 例えば、このところ機体のトラブルが止まらないエアラインでは、整備間隔の延長や整備部門の海外(丸投げ)委託、「機体付き整備士制度」(人間に例えると主治医のような制度)の廃止など、明らかに保守・整備コストの削減が影響していると思われるのだが、かつてのような「ある程度のコストを要する整備体制に戻せ」という声は、現場以外のどこからも出てこないのが現状である。

 そうなると、最終的に判断する経営トップがどこまで現場の声に真摯に耳を傾けるか、に私たちの安全が委ねられていると行っても過言ではないが、今回のプールでは現場が運営者と全く別の組織に丸投げされており、現場の声が管理(経営)する側まで伝わらない、いわゆる「風通しの悪い組織」となっていたことも、事故の背景と指摘すべきだろう。

 また、政治家と経済界が「コスト削減と規制緩和こそが是」という今の方針を見直さない限り、私たち市民(ユーザー)が出来ることといえば、多少コストがかかっても安全と思われる企業・施設・商品(個人的には米国産牛は食べたくないが、加工品や外食などで知らないうちに食べさせられるケースも出てきそう)を選択するぐらいしか自衛策がないのも事実。
 その一方、短期的なコスト削減が長い目で見て本当にコスト削減となっているかについて、私たちはもっと検証する必要があると思う。

 不謹慎な話で誠に申し訳ないが、今回も救出作業のためにプールの営業を中止し、さらには排水管を破壊しており、なにより人の命はお金には換えられない。
 目先の保守・管理コストを少しばかり削減しても、結局は高いツケを払わされるのだというこを、最終的な判断を握っている経営責任者には早く気付いて貰いたいものである。
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by azarashi_salad | 2006-08-01 16:06 | 社会 | Comments(8) <:/p>

Commented by おかにゃん at 2006-08-02 01:00 x
こんばんは。
今回の事故も,どうやらコスト削減を重視するあまり,安全性を軽視した結果発生した可能性が高いですね。
もちろん,今後の捜査結果を見守りたいとは思いますが,各市町村もこれを機にプールはもちろん,様々な公共施設の安全性についてもう一度見直すべきなのかもしれませんね。
Commented by taketombow at 2006-08-02 01:05
 民間への外部委託をすれば、最悪の場合このようなことも起こりうることも分かっていたはず。
 採算を考えるのなら、一時期しか使わないこのような施設をそもそも作るべきではなかったと思います。多額の税金を使い大きな施設を作り、採算が厳しいから、維持管理を外部委託する。最初から維持コストも考えていたのでしょうか。
 結局もうけているのは、施設を作った建設会社だけかな。
Commented by azarashi_salad at 2006-08-02 09:01
♪おかにゃんさん、こんにちは。
いくらマスコミや市民団体が安全重視を説いても、財界主導の今の政治状況ではそう総簡単にはコスト・効率重視の流れは変わらないでしょうから、前回のエントリーで書いた「具体的な成果が表だって見えない安全コストをいかに評価するか」や、このエントリーで書いた「短期的なコスト削減が長い目で見て本当にコスト削減となっているかについての検証」等を広めていくしかないのかなと思うこの頃です。
昨日の中日新聞夕刊で、京都大学・鎌田浩毅教授の「空間的・時間的バッファー」
http://www.chunichi.co.jp/00/sci/20060801/ftu_____sci_____002.shtml
というコラムが掲載されていましたが、「ゆとり」を「バッファー」と表現するだけで社会に受け入れられ易いかも知れません。
詳しくは、時間があれば後ほどエントリーしたいと思います。
Commented by azarashi_salad at 2006-08-02 09:17
♪taketombowさん、こんにちは。
おっしゃるとおり、予算と人がいなければ施設の維持管理は出来ないわけですから、市町村合併でこれまでのような維持管理が難しくなった時点で、施設を取り壊すか売却するという選択肢もあったと思われます。
その場合、「行政サービスの低下ではないか」と指摘する市民も中にはいるでしょうが、そもそも合併して以前よりサービス低下するのは、合併により店舗数が減った銀行などでも同じこと。
「小さな政府=行政サービス低下」をよく説明して、市民に納得してもらうべきだったと思います。
市側(市長?)が、そうした一時的なマイナスイメージを恐れて面子だけでプールの運営を続けていたのだとすれば、それこそ市の責任も重大というものです。
Commented by おおた葉一郎 at 2006-08-02 21:29 x
こんにちは、長くお休みだったので「あざらしサラダ氏はなぜブログを棄てたか」というブログを書こうかと思ってはいませんでした。

さて、今回の事故で、もっとも気になるのは、「緊急ポンプ停止ボタン」をなぜ、押さなかったか?ということではないでしょうか。
まず、緊急停止ボタンがあったのか?、あるいは管理者は誰でも押していいことになっていなかったのか?あるいは・・あるいは・・
Commented by lba at 2006-08-03 00:12 x
コストと安全は確かに比例すると思いますが、人件費の高い公務員なら安全で民間委託のアルバイトは危険というのは単純すぎます。
問題点は2点。ちゃんと安全性をチェックしているかの現場の監査と、現時点で不備がある施設を使用停止処分すべき。
未だに通達のみで済ませているのは何故でしょうか?工事予算を考慮しているだけならばあまりにも軽視しすぎですね。毎年のように事故が起こっているのだから。
Commented by azarashi_salad at 2006-08-03 03:26
♪おおたさん、こんばんは。
ブログを捨てるというよりは、ネットそのものを捨てるかも知れませんが、笑。
このプールに緊急停止ボタンがあったかどうか分かりませんが、今回のような緊急時のマニュアルは無かったようですね。
もっとも、緊急時といってもあらゆるケースがある訳ですから、現場責任者はマニュアルに頼るのではなく、常にその時点での最善の判断が求められると思います。
ふたが外れたことが分かった時点で利用客を一時プールから上げるという判断がどうしてできなかったのか?
私は、これが最大の判断ミスだと思います。
Commented by azarashi_salad at 2006-08-03 03:38
>lbaさん、「人件費の高い公務員なら安全で民間委託のアルバイトは危険」というのは単純すぎます。
そうではなくて、予算がなくて維持管理が困難な施設を無理して運営すると、安全担保のために本来必要な経費までカットされるということです。

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