【耐震偽造問題に対する公的資金投入について考える】

a0008617_10524985.gif●住民の引っ越し費を補助 政府が耐震偽造の支援策 [ 12月03日 共同通信 ]
 耐震強度偽造問題で政府は3日、耐震性が不十分なことが確認された分譲マンション住民への支援策をまとめた。住民の引っ越しやマンション解体、撤去、建て替えなどの費用を国と地方で一定程度を補助し、住民の負担を減らすなどの内容だ。
 必要な予算は、次期通常国会に提出する補正予算案に盛り込む。対象となるマンションは固まっておらず、予算額は引き続き調整する。住民の生活再建にめどを立て、危険マンションから12月中の退去を進める狙い。
 6日にも安倍晋三官房長官のほか北側一雄国土交通相ら関係閣僚が会合、最終決定する。
 建て替え費などの補助は、(1)耐震性に問題がある建物を放置するのは周辺住民にも危険で撤去に公益性がある(2)建て替えの展望がないまま撤去すると住民には資産なしでローンだけが残る-など理由で決めた。

○先ほどのエントリーで「余り書く気がおきない」と書いたばかりだが、どうにも釈然としないので一つだけ書いておこうと思う。
 それは、今回の耐震強度偽造問題の被害者住民に対する公的支援についてである。

 上のニュース記事に書かれているとおり、政府は公的資金(税金)を投入して「住民の引っ越しやマンション解体、撤去、建て替えなどの費用を国と地方で一定程度を補助し、住民の負担を減らす」つもりのようだ。

 もちろん、被害にあった住民の方々には何の罪もないことは重々承知しているのだが、本当に税金で支援することが正しい方策なのか、どうにも違和感が払拭できない。
 例えばオレオレ詐欺など、耐震強度偽造以外の「詐欺」(意図的な偽装により不良品をつかまされたのだから今回も詐欺のようなものだろう)の被害にあった国民に対して、政府が税金で支援した例がこれまであったのだろうか?

 また、今回問題が発覚したマンション以外にも、古い木造住宅など震度5強の地震で倒壊するかも知れない建物に住んでいる方々は日本中に大勢いると思うのだが、そうした建物に住んでいる方々に対しても退去勧告や退去命令を出して税金で支援するのだろうか?

 ちょっと考えただけでも、こうした疑問が次から次へと思い浮かぶ。

○ちなみに、耐震強度偽造(文藝春秋編 日本の論点PLUS)には、本件の責任の所在について次のように書かれている。
 国土交通省は当初、「民間と民間の問題だ」として偽造問題に関与しない姿勢を示していたが、問題が広がりを見せたこともあり、北側国交相は22日の記者会見で、「建築確認という公の事務が関与しており、行政がしっかり対応しなくてはいけない。建築主である売主はまず、契約上の責任を負わなければならない。そのうえで設計事務所、施行業者、指定確認検査機関に落ち度があるかどうかを明らかにし、行政の責任についても検討していかねばならない」と語り、住民の救済に取り組む姿勢に転換した。

 建築確認がもともと公の事務であり、なおかつそれが規制緩和により民間に開放されたことなど当初から関係者は分かっていたはずだが、なぜ政府は急に方針を変更したのだろうか?

 一部のブログからは「アネハさんの奥さん、熱心な信者だったんでしょう? “そちらの親分”に面倒みてくれるように、頼めないんでしょうかね、北側センセイ?」なんて噂も聞こえてくるが、政府が方針変更したきっかけとなった北側大臣の「鶴の一声」に何らかの政治的意図はなかったのだろうか?

○私は、この問題に関してはいくつかのブログで、次のようにコメントしてきた。
 今回の教訓は、官と民のどちらが適切に検査が行われていたかということよりは、最終的に誰が責任を取るかではないかと思っています。
 その意味では、もし行政が直接検査をしていたならば国家賠償法に基づく補償が受けられたかも知れませんが、民間の検査機関だと、支払い能力がなければ被害者は泣き寝入りです。
 小泉首相が進める「小さな政府」の意味は、このように「これからは国は責任を取りませんよ」ということですから、それを十分理解した上で、国民が選択する覚悟が必要だということです。

 私は、こうした被害者に対する行政責任については国家賠償法による救済が定められており、建築確認に限らず行政が業務を民間に開放した時点で、その業務に関する賠償責任は生じないと考えている。

 もし、そうでないならば、利益は全て頂戴できるのに瑕疵担保責任については行政が面倒を見てくれるのだから、これほど美味しい商売はないのではないか。

 実は、今もこの考えには変わりはなく、その意味でも今回の公的資金を投入する支援は、あくまでも国家賠償法に基づく救済ではなくて、政府として国民の安全を担保するという性質のものでなければならないと考える。

 であれば、なおさら先に例に揚げたようなケースとどう区別するのか、という疑問が払拭できないのだが・・・。

○そうした中、よろずもめごと論さんのブログ記事(構造設計サギ問題の落としどころ)に書かれている提案は、非常に建設的で新鮮な意見だと思う。

 それは、銀行(金融機関)が問題の物件を差し押さえる代わりにローンをチャラするというものだ。
 この方法だと、姉歯建築士やヒューザー、イーホームズなどの関係者も入居者がすでに支払った頭金分だけを返済すればよく、倒産による被害住民の泣き寝入りも随分防げるのではないだろうか。
 住民にしても、現在支払っているローンが免除になれば、新たな生活を開始することも可能となる。

●大手銀行 中間最終利益は過去最高、1兆7290億円(毎日新聞) - 11月25日

 銀行(金融機関)にしても、ローン契約している個人が破産すればどうせ不良債権になるのだから、上の記事のように超低金利の恩恵でバブル以来の好調な業績を上げている今こそ、よろずもめごと論さんの次の言葉に耳を傾けてはどうだろうか。

 バブルの時代に融資先を求めて、開発を煽ってきたのは銀行だ。そのツケとして莫大な不良債権を抱えることとなったが、公的資金の投入で生き延びたのではないか。
 その恩に報いる時が来たのだ。

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by azarashi_salad | 2005-12-04 12:32 | 政治 | Comments(11) <:/p>

Commented by ちびのり日記 at 2005-12-04 13:02 x
うーん、特に今回公的資金導入が早期に配慮された背景には、土木事業界と政界の関係もあるのかな?どのような場合に公的資金を導入するかの線引きはしていないのだから、、一部から不満が出るのも仕方無いですね。
Commented by rabbitfootmh at 2005-12-04 13:32
TB&コメント&リンク、ありがとうございます。
こんなことでまた、「健全な民営化」への脱皮が妨げられては、日本は“発展途上国”と揶揄されてしまうのではないでしょうか?
「民営=すべて悪」という単純な図式にするのではなく、「民」の皮を被りながら「親方日の丸」に寄生して甘い汁を吸っている人たちの意識を、厳しく問うべきだと思います。
Commented by おおた葉一郎 at 2005-12-04 16:50 x
こんにちは、私見なのですが、国家賠償の話は「まだ早い」のだと思います。だいたい、誰が被害者なのか決まってないからです。本来的には、売買契約が有効かどうか(たぶん有効だとは思いますが)。そして、最終損失者は損害賠償を請求します。たいへん難解な裁判の結果、金銭的被害者が特定されるので、それからだと思います。そして、訴えられる集団の中に、行政あるいは立法の責任がふくまれるでしょうね。
全国の多くの市民が「欠陥住宅」を買わされて、裁判所にあしげにされている実態から言うと、不公平感は否めません。はっきり言うと、川崎市内で150M2で5000万円の新築マンションなんか、わけありに決まっているからです。十分、素人でもわかります。
それと、銀行からいえば、担保としてマンションを押さえて4000万円貸し付けたりしていても、担保価値がゼロになったのだから、こちらも被害者でしょう。まあ、すぐに残金を払えとは言いにくいだろうけど・・
Commented at 2005-12-04 21:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 大西宏 at 2005-12-04 23:45 x
行政の、あるいは行政が制定した検査機関の検査を通しているため、どうとるかは別にして行政は責任を逃れることは出来ません。問題は検査や保険制度などのしくみそのものに欠陥があるということです。ちょっと制度設計した官僚のIQというか常識を疑う制度欠陥であり話しになりません。国交省の役人も責任をとらせるべきです。銀行に求めるの筋が違うのじゃないでしょうか。いかに銀行がえげつないとはいえ、今回で責任を問うというのは感情論じゃないでしょうか。それよりヒューザーは瑕疵責任があるのですから、はやく資産を差し押さえることが必要でしょうね。
Commented by azarashi_salad at 2005-12-05 00:26
♪みなさん、コメントありがとうございます。
まだ考えがまとまっていないので、中間的にまとめレスで返させて頂きます。(まとまったら新たなエントリーで補足する予定です)
私は、公的資金(税金)で補償するならば国家賠償法を適用するぐらいしか思いつきませんが、国家賠償法はたった6条しかない非常にシンプルな法律で、その第1条に「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と規定されています。
つまり、この条文からすると「国や公共団体が損害を賠償するためには、役人の行為に過失があるだけではダメで違法性がなければならない」と思うのですが、今回のような意図的な偽装行為を見逃した建築検査機関の監督官庁と言うだけで、果たして違法性まで問うことが出来るのか疑問に思うのです。(もちろん監督官庁に全く責任がないということではなくて、あくまで賠償責任があるかという意味ですが・・・)
Commented by azarashi_salad at 2005-12-05 00:26
それから、銀行(金融機関)については、ただ感情的に責任を転嫁する意味ではなくて、よろずもめ事論さんも述べているとおり、そもそも銀行(金融機関)も当該物件を借金の担保として認めた上で貸し付けたのだから、耐震強度偽造で物件の価値が下がったからといって物件では受け取れないと言うのは、銀行(金融機関)側の身勝手ではないかと思うのです。
ましてや、銀行はバブル後の多額の不良債権を抱えていたときに公的資金(税金)を投入してもらった借りがあるので、この機会に少しでも借りを返してはどうかと思うのですが、現実性はかなり低そうですね。
また、大西さんが言っているとおり明らかに瑕疵担保責任があるヒューザーについては、早急に資産を差し押さえるべきと思います。
Commented by ひで at 2005-12-05 11:51 x
大いに同感だな。
公的支援、と言ったって我々の税金だからな。簡単に今の段階で言われたって困るんだよな。責任の所在をはっきりさせることに全力を挙げるべきじゃないの。
 あと、ヒューザーや木村建設の資産を洗いざらい差し押さえる。
 こう言っちゃあ何だけど、マンションが倒壊したらマンションを買った人、オーナーにも責任があるんだよ。
 そういうことははっきりさせなくちゃいけない。

 なんか最近政府は補償づいてないか。ハンセン病、アスベスト、もうきりがない。

 そして偽装マンション。こんなのにさっさと税金を出していたらもう働くのがいやになってしまうな。

 はっきり言って、税金なんか払いたくないよ。

 北側ってあれ公明党だから、ちょっと変なことばかりするよな。お馬鹿な中国のビザ発給を全土に広げ、あの反日国家韓国にビザ免除をしたのも北側だ。

 どうもあいつは国の破壊者のように思っていたら、今度はこうだ。  ああ、本当にいらいらする。
Commented by chaotzu at 2005-12-05 23:47
あざらしサラダさん、こんばんは。
おっしゃるとおり、震度5強で倒れる懸念がある建物は、少なからずあると思います。現に私の住んでいる集合住宅もそうです。半世紀で二回も大地震に遭うことはないだろうとただ祈るだけ(笑)。
わたしは政府の購入者救済策=関係業界の救済策だとみています。国が瑕疵担保責任の一部を引き受けるから安心してマンションを買ってくださいというアナウンスではないでしょうか。
なにより国のすることにしては、手回しが早すぎです。
あえて個人的ひがみ度100%の意見を申しますと、
阪神大震災で被災された方のなかには、自宅の損壊とその復旧苦労だけにとどまらず、事業や商売に深刻なダメージを受けたひともいました。なかにはそれらに加えて家族の喪失という最大の不幸に遭われたひともいました。三重苦、四重苦です。
私の知人のなかにも、そのために寿命を縮められたひとが複数名います。だから、どうにも釈然としないのです。
Commented by chaotzu at 2005-12-05 23:48
つづきです。
あと、金融機関に関しては、関係物件からこれまで得た収益相当額は「返納」すべきだと思っています。
貸倒償却が増加しますが、当期利益で十分吸収できるでしょう。
国の直接支援をやむを得ないとする場合であっても、その内容については、関係当事者からの「弁済等」をどれだけ確保できるか、まずはそれが先だと思います。
Commented by azarashi_salad at 2005-12-10 00:09
♪chaotzuさん、こんばんは。
コメントのお返事が遅くなってすみません。
おっしゃるとおり、今回の公的支援は「誰のための支援なのか」が問われていると思います。
国民全体には小さな政府を迫っているはずなのに、気がついたら一部の勢力だけは大きな政府が守っている、そんな社会にすべきではないでしょう。

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