▼パソコンを鍵付きワイヤで固定する?

●先日エントリーした(★誰が加害者で誰が被害者?)とそれに続く一連のエントリーに対する反響が意外と大きかったので、似たようなもう一つの事件の報道を紹介したいと思います。

○事件は、県立津工業高校の生徒指導室から、在校生や卒業生計276人分の成績や電話番号などの個人情報が入ったパソコン1台などが盗まれたというものです。
 これについて、2つの記事を見つけましたので、それぞれの記事の内容を比較しながら問題点について考えてみたいと思います。
 
●生徒情報入ったPC盗難 三重県立高校で276人分(共同通信) - 4月9日

○前回は「問題があるのではないか」と指摘した共同通信ですが、今回の記事は事件についての「主張」を余り盛り込まず、どちらかといえば「事実」だけを淡々と伝えています。

 この記事から分かる事実は、
①高校の生徒指導室から、在校生や卒業生計276人分の成績や電話番号などの個人情報が入ったパソコン1台が盗まれた。
②机の上に置かれていたパソコンのほか、生徒から預かっていた制服約70点も盗まれていた。
③パソコンは数学担当の男性教諭が使っており、1年生から3年生まで197人分の数学の成績や、卒業生40人分の各教科の成績などが保存されていた。
④パソコンにはパスワードが設定されていた。


 記事の内容は、ほとんど教育委員会の発表に基づく事実関係が中心となっていますが、「盗難」という事件を報道するにあたって「パソコンは数学担当の男性教諭が使っていた」という事実をあえて伝えることが必要かどうかは意見が分かれるところではないでしょうか。

 今回の事件については、個人情報(正確には個人情報が入ったパソコン)が盗難されたことだけに関心が集まりがちですが、この記事にも書かれているとおり、パソコンにパスワードが設定されているのであれば、個人情報が盗み見られる可能性は低いのではないかと思います。(ちょっと大げさに捉えすぎのような気がします)
 それよりも、保護者としては制服約70点が盗まれたという事実の方が気になりますが、こちらの管理はどうなっていたのでしょうか。

○一方、同じ事件に対する中日新聞の記事ですが、こちらは見出しに「管理の甘さを露呈」と書いているとおり、盗難の被害にあった学校側を批判する記事になっています。

●津工業高校でパソコン盗難 管理の甘さ露呈(中日新聞) - 4月11日

 この記事から分かる事実は、
①パソコンを盗んだ犯人は、生徒指導室の窓ガラスを割って侵入。ガラスには粘着テープを張り、割れる音を小さくし、ガラスが飛散するのを防いでいた。
②津工業高校は、(個人情報が入っているパソコン盗難防止のため)ノートパソコンをかぎ付きのワイヤで机とつなぐことを決めていたが、男性教諭はそれをせずに帰宅していた。
③(津工業高校では)パソコン本体が盗まれた場合も想定し、個人情報はすべて外部のメモリー(記憶)装置に保存し、厳重保管する対策を取る予定だった(がまだ対策は実施されていなかった)。


 この記事は、生徒から預かっていた制服が盗まれた事実に全く触れていないことから、この記者は「盗難」という犯罪よりも学校における個人情報の管理に焦点を当てていることが推測できます。

 さらにこの記事では、公表されている事実に加えて「管理が甘い」という記者の「意見」が含まれていますが、具体的にどの事実をさして「管理が甘い」と指摘しているのか、分かりづらい文章になっています。

 例えば、②のパソコンを鍵付きワイヤで机とつないでなかった事実を指して「管理が甘い」と批判しているのであれば、男性教諭の行動を批判していることになります。
 一方、③の個人情報を外部メモリに保存していなかった事実を指して「管理が甘い」と批判しているのであれば、学校側の個人情報保護対策の遅れを批判していることになります。
 あるいは、これらの双方を指して「管理が甘い」と批判しているのかも知れません。

 ただし、私の「個人的な意見」を言わせてもらうならば、②を指して男性教諭の行動を批判するのはちょっと「お門違い」のような気がします。
 その理由は、少なくとも私の認識では「ノートパソコンというものは鍵付きワイヤで机とつないで使用するものではない」からです。(笑)
 私には、「情報の盗難防止」としてこのような対策が講じられていること自体が驚きなのですが、この記事を書いた記者は疑問に思わなかったのでしょうか?

 ここから先は、実際に記事を書いた記者本人に聞いてみなければ分かりませんが、記事内で制服が盗まれた事実に全く触れていないことから、この記者はパソコンという「もの」ではなくて、パソコンの中の入っている「情報」が盗まれたことを重視していると判断していいと思います。
 ならば、「個人情報をパソコン内には残さない」という「情報」の盗難防止対策を講じず、「パソコンを鍵付きワイヤで机とつなぐ」という「もの」の盗難防止対策を優先させてしまった学校側の「方針の誤り」を、もう少し明確に批判した方がよかったのではないでしょうか

 なぜならば、多少穿った見方かもしれませんが、学校側が男性教諭の行動をあえて公表した理由は、学校側に向けられる批判を男性教諭個人の批判としてかわす狙いがあるようにも感じられるからです。

 マスコミ報道は社会的影響力が大きいため、教育委員会が公表する内容をもう少し吟味した上で、「パソコンは鍵付きワイヤでしっかり机とつないでおくべき」などという誤ったメッセージを伝えることがないような配慮が必要でしょう。

【4/16一部修正】
 最初にアップした文章に少し分かりにくい表現があったため一部修正しました。
【4/21一部修正】
 ご指摘を受けて「間違った情報盗難防止対策」という表現を修正しました
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by azarashi_salad | 2005-04-12 13:30 | 社会 <:/p>

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