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☆quarter mo@n(クォータームーン)


●<立見台連続自殺・殺人事件>8人目の被害者を確認(あざらしサラダ:9月3日)
 九月三日未明、岡山県久米原市にある振興住宅地立見台地区で女子中学生二人が投身自殺を図った。一週間後には、立見台中学の女性教師が同じ場所から投身自殺し、さらに数日後、立見台中学生四人の自殺と一人の殺人が確認されたそうだ。
 どの現場にも、"わたしのHuckleberry friend"という走り書きが残されており、捜査当局は一連の事件との関連性について調査しているとか。

○今回紹介する小説は、インターネット、チャット、自殺、連続殺人をテーマにした中井拓志著の「quarter mo@n(クォータームーン)」である。

 大人たちの「嘘(ルール)」で塗り固められた現実社会に絶望した中学生たちが、自ら築いた「ルール」で守られたネット上の仮想社会「月の帝国」に傾注し、そのルールに則り次々と自殺や殺人を繰り返す。
 「月の帝国」のルールは単純で、立見台中学以外の者を「帝国」に招き入れたり、「帝国」の秘密を警察に話したりしたら、自殺するまたは誰かが殺すというもの。

 そんな「月の帝国」を支配しているのは、サイトの作成者である「ハックルベリー」と「ヘラ」「アテネ」「アフロディア」の「三女神」と名乗る共同管理人。
 しかし四人目の女神である「アルテミス」の名は、なぜか「月の帝国」ではタブー視されていた。

 捜査の途中で"わたしのHuckleberry friend"の謎に気づいた、久米原署の中年刑事と警視庁科学警察研究所所属の女性エリート警部補は、謎を追いかけて「月の帝国」への侵入を試みる。
 次々と明らかにされる謎。なぜ「アルテミス」はタブーなのか、そして「ハックルベリー」の正体は。

 「月の帝国」が崩壊しても子供たちの暴走は止まらない。新たなチャットの場を求めて公共掲示板や町中に溢れる落書きを使い、過激な書き込みへとエスカレートしていく。
 中年刑事とエリート警部補は、どうやって子供たちの暴走を止めるのか。

○角川ホラーの作品ですが、ホラーというよりはサスペンス小説。荒唐無稽と思われるストーリーも、近頃の異常事件を思い起こせば現実社会とオーバーラップする。

 しかし筆者は、ネット社会の危険性を訴えるというよりも「嘘」で塗り固められた「現実社会」にこそ問題の本質がある。子供たちはそれに気がついていて、どうにかしてそこから抜け出そうと足掻いていることを主張したいのではないだろうか。

 折りしも、インターネットの自殺サイトを悪用した連続殺人事件について各マスコミが報道を繰り返しているが、事件の本質は「チャット」や「インターネット」にあるのではなく「歪んだ現実社会」にこそある、という視点からの報道がどれだけ出てくるか注目してみたい。

by azarashi_salad | 2005-08-08 17:42 | 文化・芸能 <:/p>

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