【NHK受信料支払い拒否について考える(2)】

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●前回の記事【NHK受信料支払い拒否について考える】に対して、多くの方からコメントやトラックバックを頂き、NHKの組織体制や企業体質に問題があることは理解できましたが、その改善のために「受信料支払い拒否が必要」と言うところは、やはり何か違うように思います。

 したがって、今回は皆さんのトラックバック記事等を参考に、NHKが抱えている問題点を私なりに分析し、問題が生じる背景と問題解決のために必要な対策について、国民または視聴者の立場から考えてみたいと思います。

■身内に甘いNHKの対策

○まず一連の不祥事に対して、NHKはどのような改善対策をとろうと考えているのでしょうか。これについてDawnさんは、NHKから送られてきた「お詫び状」に書かれていた「今後の対策」を読んだ上で、以下のとおり問題提起しています。
NHKより不祥事に対するお詫び状と海老沢会長名の『「芸能番組制作費不正支出問題」等に関する調査と適正化の取り組みについて』と云う文章が送られてきた。

今後の対策としては次のことが書かれている(要約)。
1.海老沢会長を長とする「コンプライアンス(法令遵守)推進委員会」を設置し、適正化施策を総合的に推進する。
2.「NHK倫理・行動憲章」を明文化し、「行動指針」を作成。
3.職員やスタッフからの通報や相談窓口「業務相談室」を設置(弁護士事務所に外部窓口も設置)。
4.経理の適正化のために「業務総点検実施本部」を設置し点検を実施⇒「コンプライアンス(法令遵守)推進委員会」に吸収。
5.外部の弁護士、公認会計士からなる「NHK業務点検・経理適正化委員会」が「コンプライアンス(法令遵守)推進委員会」に助言や提言を行う。

⇒これでは不祥事をうやむやにしてきた張本人が主導する「コンプライアンス(法令遵守)推進委員会」とか云うところが、今後も不明朗な対策を続けていくのだから安心してくれと言ってるようなものだと思う。対策を本気で推進するのであれば、しかも公共放送であるならば、外部組織に助言や提言ではなく、徹底した調査を行わせるべきではなかろうか。

 確かにDawnさんが指摘するとおり、このような身内に甘い対策では、多くの国民がNHKに抱いている不信感を払拭することは不可能ではないかと思いますが、なぜNHKはこのようなお茶を濁すような対策しか提起できないのでしょうか。

■NHKの組織は腐敗しているのか

○これについて大西さんは、『理念を失い、結果責任が問われない組織は腐敗する - NHK』の記事の中で、以下のとおり3つの問題点を指摘しています。
1、したい放題の監視なき経営(組織体制の問題)
2、権力と手を組む(組織トップの資質の問題)
3、理念・存在意義を見失った組織(公共放送のあり方という社会的な問題)

 一つ目の「組織体制の問題」では、同じように不祥事を出した西武グループや読売新聞グループとも共通する問題として、企業内において経営に対するチェック機能が正常に働いていないことを指摘しています。

 二つ目の「トップの資質の問題」では、NHKの海老沢会長と読売グループのナベツネに相通じる特徴として、本来は権力の監視役であるはずのマスコミのトップが時の権力者とつるんでマスコミを牛耳っているとして組織トップの資質を問うとともに、結果責任をとろうとしない組織トップの姿勢を強く批判しています。

 三つ目の「社会的な問題」については、情報の多チャンネル化が進み公共放送の必要性がぐらついているにもかかわらず、NHKには自らの組織の存在意義や理念が感じられないことを危惧しています。

 私は、上に紹介する3つの問題点についてはいずれも的を射た的確な指摘ではないかと思うので、問題を解決するためにどのような対策が必要か整理するため、問題の背景について考えてみたいと思います。

■不祥事の背景に労働組合の弱体化

○まず、一つ目の「組織体制の問題」の背景には労働組合の弱体化が影響しているのではないでしょうか

 経営のチェックは、もともと労働組合の役割の一つなわけですが、多くの企業では組織率の低迷と相まって労働組合が弱体化し、あるいは組織率は高くても労使協調路線という名の元に、真剣に経営側と対峙する労働組合が減少しています。
 このような組織では、中で働く一人一人の社員がいくら問題意識を持っていても、経営側に好まれない意見を述べると不利益を被り、また職場内に頼れる存在もないため、誰も物言わなくなってしまいます。

 NHKの労働組合である「日本放送労働組合」(=「日放労」)のHPを確認し、そこに書かれている今回の経緯や委員長談話、経営側への要求を見たのですが、これを見る限りでは、残念ながら「日放労」だけで組織改革できるのか、私は疑問に思わざるを得ません。
 下に紹介するのは、今回の不祥事を受けた「日放労」の要求ですが、見てお分かりの通り非常にソフトな文章になっており、経営側に対する強い抗議の「意志」が感じられないのです
2004年闘争方針 『04秋』わたしたちの決断 要求

 1.一連の不祥事に関して経営は説明責任を果たすこと。

 1.四期末においても受信契約数への影響が続けば、
   経営は経営責任を明確にすること。

 1.NHKと関連団体の業務展開に関しては、
   メディア界全体の発展と調和に配慮しながらおこなうこと。

 1.「社外重役」の起用を検討すること。

 1.組織ルールにのっとった業務運営をおこない、
   職場の自主性を尊重すること。

 1.「内部告発者」に関して不利益な扱いをしないこと。
   そのための具体的な仕組みを明らかにすること。

 1.「コンプライアンス推進委員会」活動に関して、
   組合に協力と参加を求めること。

 1.職場の改善要求に真摯に向き合うこと。

 このことからもNHKの労働組合がいかに弱体化しているかが読み取れ、組織の内部浄化のためには、まずは労働組合の立て直しから必要ではないか、と私は思います。

■「日放労」委員長はマスコミ界の古田会長になれるか

○二つ目のトップの資質の問題についても、一番目の問題と背景は共通しています。
 労働組合が骨抜きにされている間に、NHKの内部がトップのイエスマンばかりで物言わぬ組織になっている以上、経営側のトップを総入れ替えするぐらいに人心を一新するしか方法はないと思います。

 そのためには、先ほど紹介した「日放労」の要求を組織内部の要求にとどまらせず、プロ野球再編問題の時のような圧倒的な世論の支持を背景に、国民全体の要求にまでレベルアップすることが必要ではないでしょうか。

 プロ野球再編の問題では、古田会長率いる選手会労働組合が、自ら返り血を浴びることを覚悟の上でストを背景に正当な要求を掲げ、世論の大きな指示を得て要求の前進を勝ち取りましたが、「日放労」のHPのアクセス数を見ればわかるとおり、NHKでは組合員ですら「日放労」に大きな期待をかけていない状況ではないかと思います。

 「日放連」が、本当に自らの組織存亡に危機感を抱き、真剣に自らの組織を内部から変えていこうと考えているのであれば、選手会労働組合と同じように、自ら血を流すことも覚悟の上で強い決意で正当な要求を掲げ、国民世論を形成する先導役となることが必要ではないでしょうか。

 「日放労」は、先ほど紹介したHP上で『多くの視聴者の声に真摯に耳を傾けようとしない現在の経営の姿勢』を批判しています。
 であるならば、まず「日放労」自らがブログを立ち上げて、「多くの視聴者の声に真摯に耳を傾ける」ためのチャネルを用意するとともに、職員だけの独りよがりの要求ではなく、視聴者・国民と一体となった要求を早急にまとめることが必要ではないかと思います。
 「日放労」の委員長には、ぜひともマスコミ界の古田会長になる決意で、経営側と真剣に対峙する決意を期待したいと思います

■受信料拒否の前にステップを踏んだ議論を

○三つ目の「社会的な問題」については、本来は不祥事のあるなしにかかわらずNHKが抱えている問題の本質であるため、今回の不祥事とは切り離して国民全体で考えていくことが必要ではないかと思います。
 私は、この問題を今回の不祥事問題と絡めて安易に議論すると問題の本質を見失う恐れがあると考えており、安易な受信料支払い拒否の動きに違和感を覚えるのです。

 したがって、この問題については、まずは現行放送法の問題点を指摘する、続いて公共放送と適正な受信料のあり方について議論する、その上で放送法改正の世論を形成する、というステップを踏んだ議論を進めるべきではないかと考えます。
(受信契約及び受信料)
第三十二条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2  協会は、あらかじめ総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3  協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。

 そこで、この文章を読んだ皆さんにお願いですが、上記に掲げる現行の放送法の問題点に関するご意見を、この記事までトラックバックしていただけないでしょうか。
 受信料の問題については、トラックバックで寄せられた皆さんの問題提起を読ませて頂いた上で、あらためて考えてみたいと思います。
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by azarashi_salad | 2004-12-10 00:33 | 社会 | Comments(0) <:/p>

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